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がちょう番の女
がちょう番の女 Märchen

がちょう番の女 - メルヘン グリム兄弟

子どもたちの読書の時間: 16 分

昔、何年も前に夫を亡くした年とったお后がいました。お后には美しい娘がいて、大きくなるとはるか遠くに住む王子と婚約しました。王女が結婚する時期が来て、遠い国へ旅立たねばなりませんでした。年とったお后は、娘のために多くの金銀の豪華な器、これもまた金銀の装飾品、杯や宝石など王家の嫁入りにふさわしいあらゆる品々を荷造りしました。というのはお后は子供を心から愛していたからです。

お后は侍女もつけてやりました。侍女は王女と一緒に馬ででかけ、花婿に王女を引き渡すことになっていました。旅するための馬がそれぞれありましたが、王様の娘の馬はファラダといい、話すことができました。それで別れの時が来て、年とった母親は寝室に入り、小刀をとって指を切り、血を出しました。それから白いハンカチをもって、そこに三滴の血を落とし、それを娘に渡して、「娘よ、これを大事に持っているのですよ。途中で役にたつでしょうから。」と言いました。

がちょう番の女 メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

そこで、二人はお互いに悲しい別れを告げ、王女は胸にハンカチをしまい、馬に乗って、花婿のところへでかけました。しばらく行ったあと、王女はやけつくように喉が渇き、侍女に、「馬を降りて、お前がもってきた私の杯をとっておくれ。」と言いました。侍女は、「自分で馬を降りて、腹ばいになって川の水を飲みなさいよ。私はあなたの女中になる気はないの。」と言いました。

それで、とても喉が渇いていたので王女は馬を降りて、小川の水にかがみこみ飲んで、金の杯からのむことが許されませんでした。それで、王女は「ああ、ああ」と嘆くと、三滴の血が、「これをあなたのお母様がご存知なら、心臓が二つに張り裂けるでしょうに。

がちょう番の女 メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

」と答えました。しかし王様の娘はつつましく、何も言わないでまた馬に乗りました。

さらに何マイルか進んでいくと、昼は暑く、太陽が焦がすように照りつけ、王女はまた喉が渇いてきました。そして小川の流れに来たとき、王女はまた侍女に叫びました。「馬を降りて、金の杯で水をおくれ。」というのは王女は侍女のひどい言葉をとっくに忘れてしまっていたからです。しかし、侍女は前よりいっそう高飛車に、「飲みたいなら自分で飲みに行きなさいよ。私はあなたの女中になる気はないんだよ。」と言いました。そこでひどく喉がかわいていたので、王様の娘は馬を降り、流れている小川にかがみこみ、泣いて、「ああ、ああ」と言いました。すると血の滴は「もしあなたのおかあさまがこれをご存知なら、心臓が二つに張り裂けるでしょう。」と答えました。

こうして飲みながら流れのすぐ上に体を傾けているときに、三滴の血がついたハンカチが胸から落ち、王女が気づかないままに水と一緒に流れて行きました。王女の苦しみはそれほどに大きかったのです。ところが、侍女はそれを見ていて、もうこれで花嫁に力をふるえると考えて喜びました。というのは、血の滴を失くしたので、王女は弱く無力になったからです。

それで、王女が自分の馬のファラダにまた乗ろうとしたとき、侍女は、「ファラダは私の方が合ってるわ。あなたにはこのやくざ馬で十分よ。」と言いました。王女はその馬に甘んじるほかありませんでした。それから、侍女は、激しい言葉を言って、王女に王室の服と自分の粗末な服を取り替えるよう命令しました。そしてとうとう、王女は、天に誓ってこのことを王室の誰にも何も言わないと約束させられました。もしこの誓いをしなければ、その場で殺されていたのです。しかし、ファラダは一部始終を目にし、よく見つめていました。

今度は侍女がファラダに乗り、本当の花嫁は悪い馬に乗って、進んで行き、とうとう二人は王宮に入りました。花嫁の到着は大喜びで迎えられ、王子は花嫁を出迎えて走り出て、侍女を馬から降ろしてあげ、侍女が花嫁だと思っていました。

侍女は階段へ案内されましたが、本物の王女は下に立ったまま残されました。そのとき年とった王様が、窓からながめ、王女が中庭に立っているのを見て、娘がとてもかわいらしく上品で美しいのに気付きました。それですぐ部屋に行き、花嫁に、一緒に来て今中庭に立っている娘は誰か、と尋ねました。「あの娘は途中で道づれとして連れてきた者です。遊んでいないように何か仕事をさせてください。」

しかし、年とった王様には娘にさせる仕事がなく、何も知りませんでした。それで、「がちょう番をしている子供がいるから、手伝いをさせよう。」と言いました。その男の子はコンラッドという名前で、本物の花嫁は、その子ががちょうを世話するのを手伝うことになりました。その後まもなく、偽の花嫁は、若い王様に、「あなた、お願いがありますの。」と言いました。「いいよ。言ってごらん。」と王子は答えました。「では、家畜を殺す人を呼んで、私がここに乗ってきた馬の頭を切ってもらってくださいませ。旅の途中であの馬には困りましたわ。」本当は、自分が王様の娘に何をしたか馬が話すかもしれないと恐れたからでした。

それから、偽花嫁は、王子にそうすると約束させることができ、忠実なファラダは死ぬことになりました。このことは、本物の王女の耳にも聞こえてきたので、こっそり畜殺人に、ちょっと仕事をしてくれたら金貨を一枚あげると約束しました。町に大きな暗い門があり、そこを王女は朝夕、がちょうを連れて通らなくてはなりませんでした。「お願いですから、一度以上会えるように、ファラダの頭をその門に釘でとめてほしいの。」と王女は言いました。畜殺人はそうすると約束し、頭を切りとると、暗い門の下にしっかり釘付けしました。

朝早く、王女とコンラッドはがちょうの群れをこの門の下に追い立てていくとき、王女は通りながら「ああ、そこにかかっているファラダ」と言いました。すると、頭は、「ああ、若いお后さま、なんとひどいことでしょう。あなたのお母様がこれを知ったら、心臓が二つにひきさかれるでしょう。」と答えました。

それから二人は町からずっと遠くまで出かけ、野原へがちょうを追いたてました。

がちょう番の女 メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

牧草地へ来ると、王女は座って、髪をほどきました。その髪は純金のようで、コンラッドはそれを目にし、輝いているのが嬉しくて、二、三本抜こうとしました。すると、王女は、「吹け、吹け、やさしい風よ、コンラッドの帽子を吹き飛ばし、コンラッドをあちこち追いかけさせておくれ。私が髪を編んで縛るまで。」

すると、突風が吹いて来て、コンラッドの帽子を野原の遠くまで吹き飛ばし、コンラッドは追いかけて行くしかありませんでした。

がちょう番の女 メルヘン画像: Paul Hey (1867 – 1952)

戻って来たときは王女は髪をすきおわり、また結いあげているところでコンラッドは一本もとれませんでした。それでコンラッドはむくれて王女に話しかけようとしませんでした。こうして夕方までがちょうの番をして、家に帰りました。次の日、がちょうを追いたてて暗い門を通る時、「ああ、そこにかかっているファラダ」と言いました。すると、頭は、「ああ、若いお后さま、なんとひどいことでしょう。あなたのお母様がこれを知ったら、心臓が二つにひきさかれるでしょう。」と答えました。

そして、王女はまた野原に座り、髪をすき始め、コンラッドは走っていって髪をつかもうとしました。それで王女は急いで「吹け、吹け、やさしい風よ、コンラッドの帽子を吹き飛ばし、コンラッドをあちこち追いかけさせておくれ。私が髪を編んで縛るまで。」すると風が吹いて、コンラッドの帽子を頭から遠くまで吹き飛ばし、コンラッドは追いかけて行くしかありませんでした。戻って来たときは王女はとっくに髪を結い上げてしまっていて、コンラッドは何もとれませんでした。そうして夕方になるまでがちょうの番をしていました。

がちょう番の女 メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

しかし、家に帰ったその晩、コンラッドは年とった王様のところへ行き、「もうあの娘と一緒にはがちょうの世話をしません。」と言いました。「どうしてかね?」と年老いた王様は尋ねました。「ああ、だってあの人は一日中私を怒らせるのです。」それで年老いた王様は、いったい娘が何をしたのか語らせました。コンラッドは言いました。「朝、がちょうと一緒に暗い門の下を通る時、壁に馬の頭がかかっていて、あの人は『ああ、そこにかかっているファラダ』と言うんです。すると、頭は、『ああ、若いお后さま、なんとひどいことでしょう。あなたのお母様がこれを知ったら、心臓が二つにひきさかれるでしょう。』と答えます。」コンラッドは続けて、がちょうの草地で起こったことや、そこで帽子を追いかけさせられたことを語りました。

年老いた王様は、コンラッドに次の日もがちょうを追うように命令し、朝が来るとすぐ、暗い門のかげに行き、娘がファラダの頭に話しかけるのを聞きました。それから自分もまた野原にいき、牧草地のやぶのかげに身を隠しました。そこに、まもなくがちょう番の娘とがちょう番の男の子が群れを連れてくるのを自分の目で見ました。また、しばらくして娘が座り髪をほどき、その髪がきらきら輝くのもみました。まもなく娘は言いました。「吹け、吹け、やさしい風よ、コンラッドの帽子を吹き飛ばし、コンラッドをあちこち追いかけさせておくれ。私が髪を編んで縛るまで。」

すると、サッと風が吹き、コンラッドの帽子をさらっていったのでコンラッドは遠くまで走らされました。

がちょう番の女 メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

一方、娘は静かに髪をすき、編み続けました。これをすべて王様は見ていました。それから、そっと王様は立ち去りました。がちょう番の娘が夕方に帰ってくると、王様は娘をそばに呼び、どうしてこういうことをしたのか尋ねました。「それを言ってはいけないのです。私は人間には誰にも悲しみを訴えられません。天に誓って言わないと約束したのですから。もしそう誓わなかったら、殺されていたのです。」

王様はしきりに促して何度も何度も話すようにと言いましたが、娘からは何もひきだせませんでした。それで、「わしに何も話すつもりがないなら、そこの鉄のストーブにお前の悲しみを話すがいい。」と言って立ち去りました。それで、王女は鉄のストーブに這って入り、泣いて訴え始め、心のありったけを打ち明け、「私は世間みんなから見捨てられここにいますが、私は王様の娘です。不実な侍女が力づくでむりやり私の王家の服を脱がさせ、私と入れ換わって花婿と一緒にいるのです。そして私はがちょう番の娘として卑しい仕事をするしかなくなりました。これをお母様が知ったら心が張り裂けてしまうでしょう。」と言いました。

ところが、年老いた王様は、外のストーブの煙突のそばに立って、娘の言うことに聞き耳をたて聞いていました。それからまた戻り、娘にストーブから出るように告げました。王族の服が娘の前に着せられ、娘がどんなに美しかったことか、驚くべきことでした。年老いた王様は、息子を呼び出し、ただの侍女が偽花嫁になったこと、本物は前のがちょう番の娘でそこにたっている、と明かしました。若い王様は娘が美しく若いのを見て心から喜びました。それから家来や親しい友達のみんなが招かれる大宴会が準備されました。

食卓の上座に花婿は座り、王様の娘と侍女は花婿の両隣に座っていましたが、侍女は目がくらみ、まばゆい衣装のため王女だとわかりませんでした。

がちょう番の女 メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

食べたり飲んだりして賑やかな時、年老いた王様は侍女に、これこれのやり方で主人に接した人にはどんな罰がふさわしいか、というなぞをかけました。そして同時にまるまる話をして、そんなひとはどんな刑に値するか、と尋ねました。すると不実な花嫁は、「その人は、すっ裸に服をはぎ、中にとがった釘をうちこんだ樽にいれ、その樽を2頭の馬につなぎ、死ぬまで、あちこちの通りを引きずりまわすのが一番よろしいでしょう。それよりもよい運は望めませんわ。」と言いました。

「それはお前だ。」と年老いた王様は言いました。「そしてお前は自分の刑を言ったのだ。それではおまえにその通りの刑を与えよう。」刑罰が実際に行われた時、若い王様は本物の花嫁と結婚しました。それから二人とも平穏で幸せに国を治めました。

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背景情報

解釈

言語

この物語は、グリム兄弟の「がちょう番の女」というおとぎ話です。物語は、王女と彼女の侍女による入れ替わりと、その後の出来事を描いています。

物語の冒頭では、年老いたお后が娘を遠くの王子と結婚させるために送り出す場面が描かれています。娘は母から血の滴がついたハンカチを渡され、旅の助けになると言われます。しかし、旅の途中で喉が渇いた王女が侍女に協力を求めるも、侍女は冷たく拒否します。王女は仕方なく自ら水を飲みますが、その過程でハンカチを失い力を失います。

侍女はこの機会を利用し、自分が本物の花嫁だと偽って王子の元に現れ、王女をがちょう番として働かせます。物語の中心では、忠実な馬ファラダの頭が、暗い門に飾られ、王女に「もしお母様がこれを知ったら、心臓が二つに引き裂けるでしょう」と語りかけるシーンがあります。また、王女の美しい髪が風に守られる場面も描かれています。

最終的に、王女の正体は年老いた王によって明らかにされ、王子と本物の王女は結ばれます。一方、偽の花嫁である侍女は、自身が提案した残酷な刑に処されます。

この物語は、正義が最終的に勝利し、嘘や裏切りが罰せられるというテーマを持っています。また、王女の忍耐や誠実さが報われる点も強調されています。

「がちょう番の女」は、グリム兄弟によって書かれた、よく知られるおとぎ話の一つです。この物語には多くのテーマや教訓が含まれており、さまざまな解釈が可能です。以下に、そのいくつかの解釈を示します。

身分の逆転と正義の回復: この物語は、身分や地位が逆転することをテーマとしています。偽の花嫁である侍女は、本物の王女を欺いてその地位を奪いますが、最終的に真実が明らかになり、正義が回復されます。この過程は、誠実さや真実が最終的に勝利することを示唆しています。

信頼と裏切り: 王女は信頼していた侍女に裏切られますが、この裏切りが物語の中心的な対立を生み出します。信頼の重要性と、裏切りがもたらす結果について考えさせられます。

言葉の力: 語りかける馬の頭や、秘密を話すために用いられる鉄のストーブなど、物語には言葉やコミュニケーションの重要性が強調されています。特に、王女が誓いによって口をつぐんでいる間、それを打ち破る方法を見つけることが鍵となります。

母親の愛: 王女の母親が与える血の魔法(ハンカチにしみ込ませた血の滴)は、母親の愛と庇護を象徴しています。このお守りは王女を守り、彼女が失ったときに弱さを感じるきっかけとなります。

贖いと結末: 物語の最後に、不実な侍女は自分の罪を自白する形で自らの罰を決め、その罰を受けます。これは、行いに対する責任を取ることの重要性を示しています。

これらの解釈は、物語を深く理解するための手がかりを提供します。読者は、登場人物の選択や行動を通じて、さまざまな教訓や価値観を見出すことができます。

「がちょう番の女」または「ガチョウ番の女王女」として知られるこの物語は、グリム兄弟によって収集された多くの童話の一つで、王女の不遇と逆転劇を描いた物語です。言語学的には、この物語からはいくつかの興味深い特徴が見られます。

古典的な語彙と表現: 物語には、古典的で象徴的な表現が多く見られます。たとえば、「心臓が二つに張り裂ける」という表現は、感情の深い悲しみや苦しみを表す伝統的な言い回しです。こうした表現は、読者や聞き手に強い感情の共有を促します。

対比と逆転: 言語技法として、王女と侍女の逆転した立場が強調されています。高貴な身分の王女が卑しい仕事をさせられる一方で、本来の身分が暴かれるシーンでは、王女の本来の美しさと高貴さが再び強調されます。このような対比は物語全体の緊張感とカタルシスを生み出します。

反復とリズム: 「吹け、吹け、やさしい風よ…」というフレーズの繰り返しや、「もしあなたのおかあさまがこれをご存知なら…」という枠組みが物語のリズムを形成し、聞き手に安心感とともに期待感を持たせます。これは童話特有の技法であり、教育的なメッセージを伝えるためにも有効です。

道徳と教訓: この物語は最終的に公正さと真実が勝利するというメッセージを伝えています。不実な侍女が罰を受け、正当な王女が報われる結末は、道徳的な教訓を強調します。言語的には、この教訓が直接的に示されるのではなく、物語の展開を通して読者に理解させる手法がとられています。

このように、「がちょう番の女」は豊富な物語要素と巧みな言語表現によって、読者に強い感情的な影響を与えるとともに、深い教訓を提供する物語となっています。

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