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ホレのおばさん
ホレのおばさん Märchen

ホレのおばさん - メルヘン グリム兄弟

子どもたちの読書の時間: 9 分

昔、娘が二人いる後家が住んでいて、娘の1人はきれいで勤勉でしたが、もう1人は醜く怠け者でした。しかし、醜く怠け者の方を、自分の本当の娘なので、はるかにかわいがりました。もう1人は、継子なので、仕事を全部させられ、その家のシンデレラになるしかありませんでした。毎日、可哀そうな娘は道の井戸のそばに座り、指が出血するまで糸を紡ぎに紡いでいました。ある日のことでした。杼(ひ)に血がついたので、そのしみを洗い流そうと井戸の水に浸しました。ところが、手からすべって井戸の底に落ちてしまいました。泣き出して継母のところへ走り、不幸な出来事のことを話しました。

しかし、継母は厳しく叱り、「自分で杼を落としたのだから、自分でとりださなくちゃだめ。

ホレのおばさん メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

」と無慈悲に言うのでした。それで娘は井戸に戻りましたがどうしたらよいかわかりません。悲しい心で、杼を取りに井戸に飛び込み、気を失いました。そして、目を覚まし意識を取り戻すと、太陽が輝き何千もの花が生えているきれいな草原の中にいました。この草原を通っていって、とうとうパンがいっぱい入っているパン焼き釜に着きました。パンは「出して!ああ、出してよ!出して!こげちゃうよ。ずっと前にやけてるんだよ。」と叫んでいるので、近づいてパン用シャベルで次々とパンをとりだしました。

そのあと、また歩いていくと、りんごがいっぱい成っている木に着きました。りんごが「揺らして、揺らしてよ!みんな熟してるんだ」と叫ぶので、娘は、りんごが雨のように落ち、全部落ちてしまうまで揺らし続けました。そして、りんごを集めて山盛りにすると、また道を進みました。とうとう小さな家に着きました。その家から老婆が覗いていましたが、とても大きな歯をしていたので、怖くて逃げようとしました。

ホレのおばさん メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

しかし老婆は大きな声で呼んで、「子供、何を怖がっているんだい?ここにとまりなさいな。家の仕事をちゃんとやれば、それだけいいことがあるよ。ただ注意して寝床を整え、よくふって、羽毛が飛ぶようにしなければいけないだけさ。-というのはそのとき地上には雪がふるんだからね。私はホレおばさんだよ。」と言いました。老婆がとてもやさしく話しかけたので、娘は勇気を奮ってその仕事をすることを承知しました。

主人の満足がいくようにあらゆることに注意し、寝床を力強く振ったので、羽毛は粉雪のように飛びました。それで一緒に楽しい生活をしました。怒った言葉は一度もありません。

ホレのおばさん メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

食べるために毎日肉を煮るか焼くかしました。しばらくホレおばさんのところにとまりましたが、やがて悲しくなりました。最初はどうしたのかわかりませんでしたが、それはホームシック(家が恋しい)とわかりました。家にいるよりも何千倍も暮らしが楽なのですが、やはりそこにいたいと思いました。とうとう娘はホレおばさんに「家にかえりたい、ここにいるとどんなに暮らしが楽でももういられません。私の人々のところに上がっていかなくてはなりません。」と言いました。ホレおばさんは「お前がまた自分の家に帰りたいと聞いて嬉しく思いますよ。お前はとても真面目に仕えてくれましたから、私が自分でお前を上に連れていってあげましょう、」と言って、手をとり、大きなドアのところに案内しました。

ホレのおばさん メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

ドアが開けられ、娘が丁度戸口の下に立っていたとき 金の雨の激しいシャワーが降り、金が全て娘にくっつきました。それですっかり金におおわれてしまいました。「お前はとても一生懸命働いたのでそれをあげよう」とホレおばさんは言いました。そして同時に井戸に落とした杼を戻して寄こしました。

そうしてドアが閉まり、娘は自分が地上に母の家から遠くないところにいるのに気づきました。そして庭に入ると、おんどりが井戸の上に座っていて「コケコっコー、金の娘のお帰りだよ。

ホレのおばさん メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

」と鳴きました。それで母のところに戻って行きました、このように金でおおわれているので、母と妹両方から歓迎されました。娘は自分に起こったことを全て話し、母はどうしてそのようなたくさんの財産を手に入れたか聞くと、醜く怠け者の娘も同じ幸運を得て貰いたいと切に願いました。

娘は井戸のそばにすわり糸を紡がねばなりませんでした。杼を血で汚すために手をイバラの薮にはさみ指を刺しました。それから井戸に杼を投げ入れ、飛び込みました。もう1人の娘と同じように、草原に来て、まさに同じ道を歩きました。焼き釜に着くと、パンは再び「出して!ああ、出してよ!出して!焦げちゃうよ。ずっと前に焼けてるんだよ。」と叫びましたが、怠け者の娘は「まるで私が汚れたいと思ってるとでも?」と答えました。そして道を続けました。間もなくりんごの木に着きました。「揺らして、揺らしてよ!みんな熟してるんだ」と叫びましたが、「そのままがいいよ。私の頭にあなたたちの1つが落ちるかもしれないでしょ。」と答えて、道を進んでいきました。ホレおばさんのところに来たとき、娘は怖くありませんでした。というのはもう大きな歯のことは聞いていたからです。それですぐ「いいよ」と雇われました。

最初の日は我慢して熱心に働きました。ホレおばさんが何かやるようにいうと従いました。というのは貰えるすべての金のことを考えていたからです。しかし2日目には怠け始め、三日目にはさらにひどくなり、それからは朝に全然起きなくなくなりました。また、やらなくてはならないホレおばさんの寝床も直さないし、羽毛を舞い上がらすために寝床を揺すりもしませんでした。ホレおばさんはこれにうんざりし、娘に帰るように言いました。怠け者の娘は十分喜んで帰る気になり、「さあ、金の雨が降るのよ。」と思いました。

ホレのおばさん メルヘン画像: Otto Kubel (1868 – 1951)

ホレおばさんはまた大きなドアに導きましたが、娘がその下に立っていると、金の代わりに大きなやかんいっぱいのコールタールが頭に降りかかりました。「それがお前の仕事のほうびだよ。」とホレおばさんは言ってドアを閉めました。それで怠け者の娘は家に帰りましたが、まったくコールタールでおおわれていました。そして井戸の上の雄鶏は、娘を見るとすぐ、「コケコッコー、汚い娘のお帰りだよ。」と鳴きました。しかし、コールタールは娘にぴったりくっついて生きてる間とれませんでした。

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