子どもたちの読書の時間: 3 分
主キリストが生まれる300年前に、12人の息子がいる母親が住んでいました。母親はとても貧しく生活に困っていたので、どうやって子供たちを養っていくのかもうわかりませんでした。母親は、息子たちみんなが約束されている救世主と一緒にこの地上にいられますように、と毎日神様にお祈りしました。暮らしがさらに苦しくなってくると、母親は息子を一人ずつ次々と世に送り出し、自分でパンを稼がせるようにしました。
一番上の息子はペテロと言い、出かけて行ってもう長い道のりを歩いていました。まる一日旅をして、大きな森に入りました。ペテロは森を抜ける道を探しましたが、見つからなくて、だんだん奥へ迷い込み、それと同時にとてもお腹がすいてきて、もう立っていられなくなりました。とうとうとても弱って横になるしかありませんでした。そしてもうすぐ死ぬだろうと思いました。突然ペテロのそばに、明るく光り輝き、天使のようにきれいでやさしい小さな男の子が立っていました。子供がその小さな手をパンパンとうちあわせたので、とうとうペテロは顔を上げて子供を見ました。すると子供は、「どうしてそんなに困った顔で座っているの?」と言いました。「ああ」とペテロは答えました。「僕は日々の糧を求めて、世間を渡り歩いているんだ。約束されている救世主に会うためにね。それが僕の一番の望みだよ。」子供は、「僕と一緒に来て。そうすればあなたの望みがかなえられますよ。」と言いました。
子供はかわいそうなペテロの手をとり、崖の間の大きなほら穴に連れて行きました。ほら穴に入ると、すべてのものが金、銀、水晶で輝いていて、その真ん中に12個のゆりかごが並んでいました。それからその小さな天使が言いました。「最初のゆりかごに横になり、少し眠りなさい。私が揺らしてあげます。」ペテロはいう通りにしました。天使はペテロが眠るまで歌を歌い、ゆりかごを揺らしました。ペテロが眠っていたとき、二番目の息子も守護天使に導かれてそこにやってきて、最初の息子のように揺られて眠りました。こうして、つぎつぎと他の兄弟もやってきて、ついに12人全員が金のゆりかごで眠りました。ところで、兄弟は、世界の救世主が生まれる夜まで、300年眠ったのです。それから兄弟は目覚め、この世で救世主と一緒になり、12使徒と呼ばれました。

背景情報
解釈
言語
このメルヘンは、グリム兄弟が収集した数多くの物語の中の一つで、宗教的・歴史的なテーマを持っています。この物語では、12兄弟が主キリストの誕生を前にして特別な役割を担うために導かれていく過程が描かれています。以下はこの物語における主要な要素です。
困難な状況: 母親は12人の息子を育てることができないほどの困難な生活をしています。この状況が物語の発端となり、息子たちを外の世界に送り出すことになります。
信仰と希望: 母親は息子たちが救世主と共に生きることを信じ、祈り続けます。信仰心が、物語全体で重要な役割を果たします。
旅と試練: ペテロを始めとする息子たちは、約束された救世主に会うための旅に出ます。彼らが遭遇する試練は、物語の進行において重要な要素です。
救済と導き: ペテロが困難に直面したとき、小さな天使のような存在が彼を導き、休息を与えます。この存在が後の兄弟たちも同じように導くことで、彼らの運命が結びつきます。
眠りと目覚め: 兄弟たちは300年間眠りにつきます。この長い眠りは、彼らが特別な使命を果たすための準備期間を象徴していると考えられます。最終的に彼らは目覚め、救世主と共に行動する12使徒となります。
この物語は、貧困や試練を経た後の救済や、選ばれた使命に忠実であることの重要性を伝える寓話です。また、グリム兄弟の作品には、キリスト教の背景がしばしば見られ、宗教的なテーマが織り込まれていることも特徴の一つです。
この物語は、グリム兄弟の民話に見られるようなメルヘンの要素を持ちながら、キリスト教の伝承と結びついた興味深い寓話です。物語では、貧しい母親が12人の息子たちを救世主と共に暮らせるようにと神に祈り、その中で最も古い息子が森で天使のような少年に会い、願いをかなえられる展開となっています。
この物語は、以下のようなテーマやメッセージを含んでいると解釈できます:
信仰と希望: 母親の強い信仰心と希望が物語を動かしており、困難な状況でも神に頼ることの重要性が描かれています。
守護と導き: 天使のような存在がペテロを導き、彼の願いをかなえる手助けをすることから、守護天使や導きの存在についても触れられています。
運命と使命: 兄弟たちは300年間眠りにつき、救世主と共に生きる使命を果たすことで、自らの運命を全うします。この点で個々人の使命や選ばれた運命についての考察がなされています。
奉仕と献身: 12使徒としての兄弟の運命は、キリストと共に人々に奉仕することを暗示しており、自らを神に捧げることの美徳を示しています。
この物語は、シンプルで幻想的な世界観の中に、深い宗教的および哲学的なメッセージを含んでいると言えるでしょう。
この物語は、グリム兄弟による「十二使徒」というタイトルのメルヘンの一部分です。物語は、救世主が誕生する300年前に貧困に苦しむ母親と彼女の12人の息子たちの話から始まります。母親は息子たちを養うことができず、彼らを次々と送り出さざるを得ません。そして、一番上の息子ペテロは困難な旅に出ますが、最終的には優しい小さな男の子、つまり天使に導かれます。
天使はペテロを光り輝くほら穴に連れて行き、そこでペテロは眠りにつきます。これと同じように、彼の兄弟たちも次々とほら穴に導かれ、金のゆりかごで眠ります。彼らは300年間眠り続け、救世主が誕生する夜に目覚めます。それから彼らは救世主と共に世界で活動し、「十二使徒」として知られるようになります。
この物語は、キリスト教の使徒たちに関する伝説を元にしたフィクションです。グリム兄弟の他の作品同様に、宗教的要素や寓話的なメッセージが含まれています。物語の中で、ペテロとその兄弟たちは信仰と献身により、最終的に救世主と共に活動するという役割を果たします。これは、信仰と希望が報われることを象徴しています。
この物語を言語学的に分析すると、宗教的な用語や暗示が多く使われており、読者に信仰の力を考えさせるような表現が多く含まれています。また、物語の構造は旅と試練、救いという古典的な要素を含んでおり、これもまたグリム兄弟の他の作品に共通する特徴です。