子どもたちの読書の時間: 4 分
農夫に、年をとってもう働けなくなった忠実な馬がありました。それで主人は馬にもう食べ物をあげる気がしないで、「確かにもうお前を使えなくなったんだが、お前に悪いようにしたくないんだ。もしお前がここにライオンを連れてくるくらい強いと証明してみせてくれれば、お前を置いておくよ。だけど、今はうちの馬小屋から出て行ってくれ。」と言いました。そしてそう言いながら、野外へ追い出しました。
馬は悲しくて天候から少し身を守ろうとして森へ行きました。すると狐が馬に会って、「どうしてそんなに頭を下げて全く一人でいるんだい?」と言いました。「ああ、欲張りと真心は一つの家に一緒に住めない。主人は私が長年仕えてきたことを忘れてしまい、もう上手に耕せないもんだから、もう食べ物をくれる気がなくて私を追い出したんだ。」と馬は答えました。「チャンスもくれなかったのか?」と狐は尋ねました。「チャンスはひどいものさ。もし主人のところにライオンを連れていけるほど強ければ私をおいてくれるんだ。だけどそんなことはできないって主人はよく知ってるのさ。」と馬は言いました。「助けてやるよ。寝転がって死んだみたいに長く伸びてて。そして動かないでよ。」と狐は言いました。馬は狐が望んだようにしました。
すると、狐は近くに巣のあるライオンのところへ行き、「死んだ馬があそこにあるんだ。一緒に来て。ご馳走が食べれるよ。」と言いました。ライオンは狐と一緒に行きました。二人が馬のそばにたっていたとき、狐は「あなたにとって、結局ここはあまり都合がいいわけじゃありませんね。そうだ、しっぽで馬をあなたにつないであげましょう。そうしたらあなたは自分の洞穴に引きずっていき、楽に食べられますよ。」と言いました。ライオンはこの助言を気に入り、寝転がって、狐が馬をしっかりつなげるように、じっと静かにしていました。しかし、狐は馬の尻尾でライオンの足を縛っていて、とても上手に強く捻じって閉めたのでどんな力も解くことはできませんでした。仕事を終えると、狐は馬の肩をたたき、「引っ張って、白い馬さん、引っ張って。」と言いました。すると馬はすぐにパッと立ち上がり、ライオンを引いていきました。ライオンは咆え始めたので、森の小鳥たちはみな恐がって飛び立ちました。しかし馬はライオンを咆えさせておき、草地を越え、主人の玄関まで引きずって行きました。主人はライオンを見ると、馬を見直して、「ここに居させてうまいものを食べさせてやるよ。」と言いました。そして死ぬまで、たくさん食べ物をあげました。

背景情報
解釈
言語
このグリム兄弟の物語「狐と馬」は、いくつかの教訓やテーマを含んでいます。
主要なテーマと教訓
忠誠心と報われる善行: 年老いた馬は主人に長年忠誠を尽くしてきましたが、役に立たなくなった途端に追い出されます。しかし、最終的にはその誠実さが報われ、再び主人に受け入れられます。この物語は、誠実に生きることの重要性を教えてくれます。
知恵と機知の力: 狐の機知により、馬は不可能と思われた状況を乗り越えます。狐の計略によってライオンを捕まえ、主人に力強さを証明する場面は、知恵が力を凌ぐことを示しています。
共存と助け合い: 馬と狐の協力は、異なる背景や特性を持つ者同士が助け合うことの価値を示しています。互いに補完し合うことで、難題を解決することが可能であるというメッセージがあります。
欲望 vs. 真心: 主人の馬に対する態度は、欲深さと真心が共存できないことを物語っています。しかし、最終的に馬の価値を再認識することで、人は物や動物を単純な役割としてだけでなく、その存在そのものを認めるべきだという教訓を伝えています。
この物語は、知恵と誠実さ、そして仲間との協力が、逆境を乗り越える鍵であることを教えてくれるものです。馬と狐の友情や共同作業の重要性は、現代にも通じる普遍的な価値を持っています。
この物語「狐と馬」は、グリム兄弟による寓話的な作品です。この物語は、友情や知恵、ずる賢さといったテーマを扱っており、以下のような解釈ができます。
知恵と機転の重要性: 物語で狐が馬を助ける方法は、本能的な強さではなく、知恵と策略によるものでした。このことは、困難な状況では単純な力よりも知恵が重要であることを示しています。
友情と協力: 狐は何の見返りも求めることなく馬を助けました。この行動は、真の友情や無償の協力の大切さを伝えています。
主人の利己心: 馬の主人は、馬が年をとって使いものにならなくなると、すぐに見捨ててしまいました。これは、人が自分にとって都合が悪くなると他者を簡単に切り捨てることの危険性を浮き彫りにしています。
忠誠心: 馬は長年主人に仕えてきたにもかかわらず追い出されましたが、ライオンを連れてくることによってその忠誠心が再評価されました。これは、忠誠心が時に報われることもあるというメッセージとも捉えられます。
総じて、この物語は倫理的かつ道徳的な教訓を含んでおり、読者に人間関係や困難に立ち向かう際の態度について考えさせられる内容になっています。
「狐と馬」というグリム兄弟の物語は、忠義、知恵、そして不条理についてのメッセージを伝える寓話です。この物語は、古びた馬が主人から見捨てられるところから始まりますが、賢い狐の助けを借りてその運命を逆転させることに成功します。
物語の最初に、年老いた馬は、もはや農作業に役立たないとして主人から追い出されます。ここで描かれる主人は、実利的かつ冷酷な態度を象徴しています。忠実に仕え続けたにも関わらず、役に立たなくなった途端に見限る態度は、欲深さと真心が共存できないことを暗示しています。
一方で、馬に新たな希望を与えるのは、「狐」です。狐は一般的に狡猾さや知恵の象徴として描かれることが多く、ここでもその特性を活かして馬を助けます。狐の機知により、馬はライオンを主人のもとに連れて行くことができ、最終的には元の恩恵を回復することに成功します。
この物語は、知恵と計略が力を凌駕することを示しています。物理的な力を持たない馬と狐が、知恵を駆使して強大なライオンを利用し、逆転を果たす様子は、強者が必ずしも勝利するわけではないことを教えてくれます。
また、物語の結末では、主人が馬を再評価し、死ぬまで面倒をみることを約束します。ここには、失われた信頼や忠誠が、ある種の形で回復される可能性があるという希望が描かれています。
このお話は、単に児童向けの物語としてだけでなく、人間関係や社会的なテーマにも通じる深いメッセージが込められていると考えられます。