子どもたちの読書の時間: 6 分
夏のあるとき、熊と狼が森の中を歩いていました。すると熊が小鳥のきれいな鳴き声を聞いて、「狼兄い、あんなに上手に鳴いているのは何の鳥かな?」と言いました。「あれは鳥の王様だよ。」と狼は言いました。「あの鳥の前にでたらおれたちはお辞儀をしなきゃならん。」本当はその鳥はみそさざいでした。「そういうことなら」と熊は言いました。「是非その王宮をみたいものだ。さあ、そこへ連れて行ってくれ。」「君が思うようにはいかないよ」と狼は言いました。「お后さまが来るまで待たなくちゃいけないんだ。」そのあとまもなく、お后がくちばしに食べ物をくわえて帰ってきて、王様も帰り、二人で幼いこどもたちにえさをやり始めました。熊はすぐにも行きたかったのですが、狼が袖をつかんでひきとめて、「だめだよ、王様とお后さまがまたでかけるまで待たなくちゃいけないよ。」と言いました。それで巣がある穴をよくおぼえてから、立ち去りました。
ところが熊は王宮を見るまで落ち着かなくて、少し経つとまたそこへ行ってみました。王様とお后さまはちょうど飛び立ったところだったので、熊が覗きこむと5,6羽のひながそこにいるのが見えました。「これが王宮?」と熊は叫びました。「ひどい宮殿だな。お前たちは王様の子供なんかじゃない、ただのみすぼらしいガキだ。」みそさざいの雛たちがこれを聞き、ひどく怒って喚きました。「違うよ、そんなんじゃないやい、私たちの両親はまっとうな人たちだぞ。熊野郎、この仕返しはきっとしてやるからな。」
熊と狼はバツが悪くなり、向きを変えて自分の巣穴に戻りました。しかし、みそさざいの雛たちはぎゃあぎゃあ喚き続けていて、両親がまたえさを運んできたとき、「僕たちが立派な子かどうかきちんとしてくれるまでハエの足一本だって食べないからね。飢えて死んだって食べるもんか。熊野郎がここにきて、僕たちに無礼なことを言ったんだもの。」と言いました。すると年とった王様が、「落ち着け、こらしめてやるよ。」と言って、すぐにお后と一緒に熊のほら穴に飛んで行き、中にどなりました。「グルルル野郎、何でうちの子たちに無礼な振る舞いをした?償いをしてもらおう。血みどろの戦いでお前をこらしめてやる。」
こうして熊に宣戦が布告されました。四足の動物はみんな戦いに参加するよう召集されました。雄牛やロバや雌牛や鹿やその他地上にいる動物みんなです。一方、みそさざいは空を飛ぶ者全部、鳥だけでなく、大小にかかわらず、ブヨ、スズメバチ、ミツバチ、ハエまで呼び集めました。戦いを始める時がくると、みそさざいは敵の司令官が誰かさぐるために偵察兵を送り出しました。
ブヨは、一番抜け目がなく、敵が集まっている森へ飛んでいき、合言葉が知らされる木の葉っぱの下に隠れました。そこに熊が立っていて、狐を前に呼び、「狐くん、君は動物全体で一番賢い。君が総大将になってみんなを指揮してくれ。」と言いました。「いいよ。」と狐は言いました。「だけど、合図はどうきめようか?」誰にもわからなかったので、狐が言いました。「僕には、素敵な長いふさふさの尻尾がある。赤い羽根飾りみたいだろ。尻尾を高くかかげたら、万事異状なしで、進軍してくれ。尻尾を垂らしていたら、できるだけ速く逃げてくれ。」ブヨはそれを聞いたあと、また飛んでいき、みそさざいに細かく報告し、全部ばらしてしまいました。
夜が明け戦闘を始めるときがくると、四足の動物たち全部がものすごい地響きをたてて走ってきて、地面が揺れ動きました。みそさざいとその軍隊も空を飛んでやってきました。ブンブン、ヒューン、ブウォーンと大群がおしよせ、みんな不安になりこわくなりました。両軍とも敵に向かって進んでいきました。しかしみそさざいはスズメバチを送り、狐の尻尾のしたにとまり、ありったけの力で刺すようにと命令してありました。狐は最初にチクリと感じた時、痛くてビクッとなり片足を上げましたが、こらえてやはり尻尾を高くかかげていました。二回目に刺された時は一瞬だけ尻尾を下ろしてしまいました。三回目はもうもちこたえられなくて、悲鳴を上げ、尻尾を股の間に挟んでしまいました。動物たちはそれを見ると、戦いに負けてしまったと思いそれぞれの巣穴に逃げていきました。それで鳥たちは戦いに勝ちました。
それで王様とお后さまは子供たちのところに飛んで帰り、「お前たち、喜べ、お腹がくちくなるまで食べて飲みなさい。戦いに勝ったぞ。」と叫びました。しかし、みそさざいの雛たちは「まだ食べない。食べる前に熊野郎は巣に来て謝り、僕たちが立派な子供たちだと言わなくてはいけない。」と言いました。それで熊はおそるおそるそこへやってきて、謝りました。それでやっと雛たちは満足して一緒に座り、飲んだり食べたりして、夜遅くまでわいわい楽しみました。